事業形態が変わった時にすべきこと

行政書士 神尾智子 事務所

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特殊経審、どんな時に必要になるのか

法人成・事業継承・合併・分割・譲渡等があった場合、前回の経審の有効期限が切れる前に特殊事項発生後の初の決算期を迎え、それに合わせて経審を受審することができるのであればそこまで待っても良いのですが、大体の場合はその前に有効期限が切れてしまうことが殆どです。

 

経審の有効期限が切れてしまうと、公共工事の契約ができない期間が発生します。

 

この状態を避けるために、特殊事項発生時で経審受審が必要になります。

 

場合によっては不要なことも

以下の場合、必ずしも受審が必要ではないとされているようです。

 

*譲渡人又は譲受人(以下「譲渡人等」という。)が建設業の譲渡を行う直前の事業年度終了の日を審査基準日とする経営事項審査(以下「譲渡直前経審」という。)を既に受けている場合に、 譲渡時経審を譲渡人等に義務付けるものではないこと。
したがって、 譲渡人等が譲渡直前経審を受けているときは、 譲渡時経審を受けない場合でも法第27条の23第1項違反にはならず、 譲渡後最初の事業年度終了の日以降の経営事項審査において、 譲渡後の新たな経営実態に即した評価がなされるまでの間は、 譲渡直前経審が有効であること。

 

*吸収合併の場合に、 存続会社の事業年度終了の日で合併直前のものを審査基準日とする経営事項審査(以下「合併直前経審」という。)を既に受けている場合に
@吸収合併については、 合併期日
A新設合併については、 新設会社の設立の日である合併登記の日
の審査基準日に係る経営事項審査 (以下 「合併時経審」 という。) を受けることを当該存続会社に義務付けるものではないこと。

したがって、この場合、 存続会社が合併直前経審を受けているときは、 合併時経審を受けない場合でも法第 27 条の 23 第 1 項違反にはならず、 合併後その次の事業年度終了の日以降の経営事項審査において合併後の状態を評価されるまでの間は、 合併直前経審が有効であること。

 

*分割会社又は承継会社(以下「分割会社等」という。)が事業年度終了の日で分割直前のものを審査基準日とする経営事項審査(以下「分割直前経審」という。)を既に受けている場合に、分割時経審を分割会社等に義務付けるものではないこと。
したがって、 分割会社等が分割直前経審を受けているときは、 分割時経審を受けていない場合でも法第27条の23第1項違反にはならず、 分割後最初の事業年度終了日以降の経営事項審査において、 分割後の新たな経営実態に即した評価がなされるまでの間は、 分割直前経審が有効であること。

 

(出典:国土交通省ウェブサイト)

 

吸収合併の場合は、存続会社と指定がございますが、譲渡と分割に関しては、どちらか一方が譲渡や分割の直前の審査基準日で経審を受審していて、その有効期限内(というか1年以内)に譲受会社・承継会社の審査基準日が到来し、経審を受審できれば譲受時・分割時経審は必ずしも必要ではない、ということです。

 

分割の場合は、分割会社の期首に合わせて分割を行えばその前日が審査基準日となりますので、承継会社の審査基準日がそこから余程遠くなければ、次の経審は承継会社の審査基準日に合わせれば分割時経審よりは煩雑さが少し和らぐスタイルで申請できます。

 

分割や譲渡がお互いの「期中」で発生した場合、とてつもなく気が遠くなる手続きが必要になりますので、認可の前に熟考なさってください。

特殊経審で考慮しなければならないこと

まず、なんのために経審を受審しているのか、これは公共工事に参加するために他ならないと思います。

 

従って

 

入札参加資格申請の受付時期を確認

認可→特殊経審受審→結果通知著発行にどのくらい日数がかかるのか、それによって入札参加資格申請に支障をきたすことはないか等、スケジュール管理は必須となります。

 

(期中で特殊事項が発生した場合は、申請自体が結構煩雑になります。)

)税理士に如何に上手く伝えられるか

この特殊経審での一番の柱は「財務諸表」です。

 

互いの期中でこのような事実が発生した場合、「分割時」「譲渡時」での暫定決算書が必要になります。

 

事実発生の日から遡って1年を当期とし、これに沿って前期・前々期を割り出します。(前期・前々期については、事実の状況によって期間が変わってきます。)

 

これを如何に上手く税理士に伝えられるか、それを理解していただいた上で経審に沿ったものを作成していただけるのか、によって完成までにかかる期間が変わってきます。

 

通常の経審と大きく違う部分は

 

*修正財務諸表清算表
*工事種類別(元請)完成工事高清算表
*税理士(公認会計士)の適正証明書

 

が必要ということです。

 

法人成・事業継承時の財務諸表

通常経審より煩雑になりますが、合併・分割・譲渡よりはシンプルです。

 

法人成の貸借対照表

個人最終財務諸表から法人設立時の資本金及び個人から引き継ぐ科目を算入、差額を引継未払金or引継未収入金として計上し、貸借を合わせます。

 

法人成の損益計算書〜注記表

従来の法人成の許可申請では、損益計算書以降は「決算期未到来につき記載事項なし」という文言だけで済みましたが、経営状況分析を申請する場合は数字を入れなければなりません。

 

損益計算書〜完成工事原価報告書の当期
例えば5月1日に法人成をした場合、まずは個人最終の1月1日〜4月30日を個人の財務諸表として作成します。

 

これも分析申請に使います。これは、税務申告する数字ですので確固たるものです。4ヶ月分はこの数字で確定です。

 

しかし、経営状況分析を申請するにあたり、損益計算書は12ヶ月分の数字が必要になります。

 

この場合の法人の12ヶ月は、設立日から逆算すると、前年5月2日〜当年5月1日までが当期となります。

 

従って、1月1日〜5月1日分(4月30日分)の数字+前年分8/12(按分)の数字を換算表に記載し、これを12ヶ月分の数字とします。

 

事業継承時の貸借対照表

前事業主の廃業日の翌日が審査基準日となります。

 

例えば4月10日廃業の場合、4月11日が審査基準日。

 

前事業主最終の貸借対照表が、現事業主の開始貸借対照表となります。

 

(ただし、全部を転記すればいいというものではございませんが...。)

 

事業継承時の損益計算書
法人成と理屈は同じです。

 

当期:昨年4月12日〜今年4月11日
前期:昨年1月1日〜12月31日
前々期:一昨年1月1日〜12月31日 となります。

 

計算は、同じように今年の1月1日〜廃業日+前年分3.3/12(按分)で出た数字を算入します。

 

法人成・事業継承は、これで経営状況分析の申請ができます。

特殊経審に必要な修正財務諸表清算表

分析機関に申請する財務諸表は、A社とB社間で整理した「結果」だけで良いのですが、経審にはこの「修正財務諸表清算表」を添付しなければなりません。

 

どのようなものかと言いますと

 

流動資産

A社

B社

相互取引による相殺分

 

合算計
(分析機関に申請するのはこの列の数字)

 
現金預金 76,820 28,630 △58,900 46,550











 

このような形で、合算計の数字になったプロセスを作成します。

 

これを注記表まで作成します。

 

縦計横計も勿論合わせます。

 

科目の取捨選択は法人成の時と同じ理屈ですが、契約書及び承継権利義務明細表と合うように作成します。

 

税理士さんが財務諸表への転記のみで良いような決算書を作成してくれるのであれば楽ですが、そうでない場合は経審申請先の行政庁が受け付けてくれるような形に編集しなければなりません。

 

こちらで組み立てた清算表については、税理士さん(公認会計士さん)に内容を確認していただいた上で「適正証明書」に署名していただきましょう。

特殊経審に必要なその他の添付書類

工事種類別(元請)完成工事高清算表

この書類は譲渡や分割等の事実があった日から遡って、2年平均なら2年分、3年平均なら3年分を修正財務諸表清算表と同じようにプロセスを加えた形で作成します。

 

経審を受審する全ての工事において換算します。

 

これを全ての完工高及び元請完工高について作成します。

税理士(公認会計士)の適正証明書

特殊経審においては暫定的な数字とは言え、財務諸表の全てを決算期と同じように作成しなければならないことから、税理士や公認会計士等、然るべき立場の方から「この財務諸表は適正である」というお墨付きをいただかなければなりません。

 

仮に数字の編集はこちらで行ったとしても、証明は飽くまで税理士・公認会計士がしなければならないのです。

 

この証明書がないことには、経営状況分析も申請ができませんのでご注意ください。

 

なぜ「適正証明書」が必要になるのか

法人成や事業継承の場合、個人事業者として遅かれ早かれ「最終決算」を税務署に提出しなければなりません。
経審に使用する財務諸表は、この「最終決算」として税務申告した数字をベースに割り出していくため、元々適性であるということになるので適正証明書は不要です。

 

しかし、会社同士の合併・分割・譲渡の際に作成する「暫定決算書」は、税務申告をしないので、これに関してこの数字で税務申告をしても問題ないということを証明するために「適正証明」が必要になるのです。

審査項目

財務諸表が完成し、経営状況分析の結果通知書が手元に届いたら、60%ほど完了といったところでしょうか。

 

あとは、通常の経審とほぼ同じです。申請書を作成し、提示資料を準備します。

 

申請書の記載については、通常とは異なる部分もございます。

審査項目 合併 分割

技術職員数

@吸収合併については、 合併期日
A新設合併については、 新設会社の設立の日である合併登記の日
による審査基準日における状況に基づき審査
ただし、 恒常的な雇用関係の有無については、 消滅会社における雇用関係も含めて審査する。

@吸収分割については、分割契約書上分割期日の定めがあり、かつ、分割期日において新会社としての実態を備えると認められる場合には分割期日、その他の場合には分割登記の日
A新設分割については、新設会社は設立の日である分割登記の日、分割会社は分割計画書上分割期日の定めがあり、かつ、分割期日において新会社としての実態を備えると認められる場合には分割期日、その他の場合には分割登記の日
による審査基準日におけるそれぞれの状況に基づき審査する。
 ただし、新設会社における恒常的な雇用関係の有無については、 分割会社における雇用関係も含めて審査する。

自己資本額、 利払前税引前償却前利益の額、 経営状況及び研究開発費の額

当期
@吸収合併については、 合併期日
A新設合併については、 新設会社の設立の日である合併登記の日
による審査基準日における状況に基づき作成し審査

 

前期
存続会社の直前の事業年度終了の日における存続会社及び消滅会社の財務諸表の科目等を合算したものを作成させ、 これにより審査する。

 

 

存続会社と消滅会社とで決算期が異なる場合においては、 存続会社の直前の事業年度の終了の日における消滅会社の財務諸表の科目等については消滅会社の直前の事業年度終了の日における財務諸表の科目等(その日が存続会社の直前の事業年度終了の日の 3 月以上前の日であるときは、 存続会社の直前の事業年度終了の日現在で作成した消滅会社の財務諸表の科目等)の数値を、 存続会社の基準決算の前期の決算日における消滅会社の財務諸表の科目等については消滅会社の基準決算の前期の決算日における財務諸表の科目等(その日が存続会社の基準決算の前期の決算日の 3 月以上前の日であるときは、 存続会社の基準決算の前期の決算日現在で作成した消滅会社の財務諸表の科目等)の数値をそれぞれ用いること。

当期
@吸収分割については、分割契約書上分割期日の定めがあり、かつ、分割期日において新会社としての実態を備えると認められる場合には分割期日、その他の場合には分割登記の日
A新設分割については、新設会社は設立の日である分割登記の日、分割会社は分割計画書上分割期日の定めがあり、かつ、分割期日において新会社としての実態を備えると認められる場合には分割期日、その他の場合には分割登記の日
による審査基準日におけるそれぞれの状況に基づき審査する。

 

新設会社については、自己資本額は設立時の開始貸借対照表の自己資本額により、利払前税引前償却前利益、 経営状況及び研究開発費の額は分割会社の審査基準日の直前 1 年における分割前の財務内容のうち新設会社の分割後の営業に相当するものに係る財務諸表を作成させ、 これらによりそれぞれ審査する。

 

前期
分割会社の分割直前の事業年度終了の日における財務内容のうち、分割会社及び新設会社の分割後のそれぞれの営業に相当するものに係るそれぞれの財務諸表を作成させ、 これらにより審査する。

建設業の営業継続の状況

存続会社の営業年数

分割会社の建設業の営業年数については、 分割会社の分割前の営業年数
新設会社の建設業の営業年数については、 分割会社の分割前の営業年数(分割会社が複数ある場合については、 全ての分割会社の分割前の営業年数の算術平均により得た値)とする。
 ただし、 分割会社が平成23年4月1日以降の申立てに係る再生手続開始の決定又は更生手続開始の決定を受け、 かつ審査基準日以前に再生手続終結の決定又は更生手続終結の決定を受けていない場合には、 当該分割会社の建設業の営業年数は0年として取り扱う。

出典:国土交通省ウェブサイト

 

表には譲渡を入れておりませんが、譲渡に関しては
譲渡人に対する企業評価の全部又は一部を譲受人に承継させるべきであると考えられるときには、譲渡人及び譲受人に係る年間平均完成工事高、自己資本額、経営状況、労働福祉の状況、営業年数及び工事の安全成績の各審査項目については、「建設業者の合併に係る建設業法上の事務取扱いの円滑化等について」(平成七年一二月四日建設省経建発第二九七号)別紙第2、2(1)の吸収合併の場合における合併時経審の各審査項目の審査方法の取扱いに準拠して算定する。
とされています。(出典:国土交通省ウェブサイト)

更生手続・再生手続

譲渡や分割を行う理由として、譲渡会社や分割会社が経営上の危機を迎えている場合もございます。

 

この場合、会社ごと倒れてしまう前に業務を譲るので、審査基準日においては分割会社等が更生や再生の手続きの真っ最中ということもございます。

 

本来、承継会社が設立から6ヶ月未満の場合には分割会社の営業年数を引き継げるのですが、このような場合の営業年数は承継会社が設立から1年未満なので「0年」、引き継がない代わりに再生手続きの有無は「無」とすることができます。

特殊経審、その後

分割時経審完了後、承継会社の次の決算期が来たとします。

 

この決算期については通常の経審で足りる、もし何か相違があったとしても「分割時経審」のような煩雑さはないだろう。

 

そう思っておりました。

 

しかし、「期中」で特殊事項が発生した場合、次の決算期が到来後の経審で以下のものを添付し、経営状況分析を申請しなければなりません。

 

*承継会社の期首から分割時までの「分割会社」の損益計算書・完成工事原価報告書への計上額
分割会社+承継会社の数字から相殺額を引いたもの
*税理士(公認会計士)の証明書
特殊な計算によるもののため、この決算期についても必要になります。

 

経審についても特殊事項が影響を及ぼす部分が出て参ります。

完工高の算定

特殊経審2期目の完工高を算出するには

当事務所では

引き継ぎありの法人設立時経審

 

個人事業者の事業継承時経審

 

吸収分割における分割時経審

 

については実績がございます。

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