認可制度(譲渡・合併・分割)
改正建設業法についての情報が公開されました。
主な改正点は
認可制度・経営業務の管理責任者・配置技術者・工期及び標識
の4点です。
認可制度
これまでは、建設業者が事業の譲渡・会社の合併・分割を行った場合には、譲渡・合併・分割後に新たに建設業許可を取り直すことが必要でした。
許可証交付までは建設業を営むことができない空白期間が生じるため、不利益を被った業者様が数多く存在した事実がございます。
そこで、今回の改正建設業法では事業承継の規定を整備し、事前の認可を受けることで建設業の許可を承継することが可能になりました。
可能性が広がります!
法人同士の合併・分割・譲渡の他に、こんな場合にも活用できます。
今までは、法人成で許可番号を引き継ぐ手続きを行っていたものを事業譲渡の認可で可能になります。
事業継承では難しかった「代替わり」が事業譲渡の認可で可能になります。
事業を縮小したい場合や、他者に譲りたい場合にも活用できます。(あまり需要はないかもしれません。)
認可に基づく許可の付与については、以下の条件が前提となります。
注意すること
建設業の業種ですが、承継元が受けていた許可業種の「全部」を承継先に引き継がせなくてはなりません。
バラバラにあちこちに振ることはできません。
承継先に引き継がせない業種については、認可申請の前日までに「廃業届」を提出する必要がございます。
譲渡及び譲受け | 合併 | 分割 |
譲渡及び譲受け認可申請書 | 譲渡及び譲受け認可申請書 | 分割認可申請書 |
役員等の一覧表 | 役員等の一覧表 | 役員等の一覧表 |
営業所一覧表 | 営業所一覧表 | 営業所一覧表 |
専任技術者一覧表 | 専任技術者一覧表 | 専任技術者一覧表 |
工事経歴書 |
合併の方法及び条件が記載された書類 |
分割の方法及び条件が記載された書類 |
直前3年の各事業年度における工事施工金額 |
工事経歴書 | 工事経歴書 |
使用人数 |
直前3年の各事業年度における工事施工金額 |
直前3年の各事業年度における工事施工金額 |
誓約書(様式第6号) | 使用人数 | 使用人数 |
成年被後見人及び被保佐人に該当しない旨の登記事項証明書 | 誓約書(様式第6号) | 誓約書(様式第6号) |
成年被後見人又は被保佐人とみなされる者に該当せず、また、破産者で復権を得ないものに該当しない旨の市町村の長の証明書 | 成年被後見人及び被保佐人に該当しない旨の登記事項証明書 | 成年被後見人及び被保佐人に該当しない旨の登記事項証明書 |
常勤役員等(経営業務の管理責任者等)証明書(イ該当) |
成年被後見人又は被保佐人とみなされる者に該当せず、また、破産者で復権を得ないものに該当しない旨の市町村の長の証明書 | 成年被後見人又は被保佐人とみなされる者に該当せず、また、破産者で復権を得ないものに該当しない旨の市町村の長の証明書 |
常勤役員等の略歴書(別紙) |
常勤役員等(経営業務の管理責任者等)証明書(イ該当) |
常勤役員等(経営業務の管理責任者等)証明書(イ該当) |
常勤役員等及び当該常勤役員等を直接に補佐する者の証明書(ロ該当) | 常勤役員等の略歴書(別紙) | 常勤役員等の略歴書(別紙) |
常勤役員等の略歴書(別紙1) | 常勤役員等及び当該常勤役員等を直接に補佐する者の証明書(ロ該当) | 常勤役員等及び当該常勤役員等を直接に補佐する者の証明書(ロ該当) |
常勤役員等を直接に補佐する者の略歴書(別紙2) |
常勤役員等の略歴書(別紙1) | 常勤役員等の略歴書(別紙1) |
建設業法施行令3条に規定する使用人の一覧表 |
常勤役員等を直接に補佐する者の略歴書(別紙2) |
常勤役員等を直接に補佐する者の略歴書(別紙2) |
許可申請者(法人の役員等・本人・法定代理人・法定代理人の役員等)の住所、生年月日等に関する調書 |
建設業法施行令3条に規定する使用人の一覧表 |
建設業法施行令3条に規定する使用人の一覧表 |
建設業法施行令第3条に規定する使用人の住所、生年月日等に関する調書 | 許可申請者(法人の役員等・本人・法定代理人・法定代理人の役員等)の住所、生年月日等に関する調書 | 許可申請者(法人の役員等・本人・法定代理人・法定代理人の役員等)の住所、生年月日等に関する調書 |
定款 | 建設業法施行令第3条に規定する使用人の住所、生年月日等に関する調書 | 建設業法施行令第3条に規定する使用人の住所、生年月日等に関する調書 |
株主(出資者)調書 | 定款 | 定款 |
貸借対照表(法人) | 株主(出資者)調書 | 株主(出資者)調書 |
損益計算書・完成工事原価報告書(法人) | 貸借対照表 | 貸借対照表 |
株主資本等変動計算書(法人) | 損益計算書・完成工事原価報告書 | 損益計算書・完成工事原価報告書 |
注記表(法人) | 注記表 | 注記表 |
附属明細表(法人) | 附属明細表 | 附属明細表 |
貸借対照表(個人) | 登記事項証明書 | 登記事項証明書 |
損益計算書(個人) | 営業の沿革 | 営業の沿革 |
登記事項証明書 | 所属建設業者団体 | 所属建設業者団体 |
営業の沿革 |
納税証明書 |
納税証明書 |
所属建設業者団体 | 主要取引金融機関名 | 主要取引金融機関名 |
納税証明書 |
誓約書(様式第22号の6) | 誓約書(様式第22号の6) |
主要取引金融機関名 |
合併契約書の写し及び合併比率説明書 |
分割契約書の写し及び分割比率説明書(新設分割の場合には、分割計画書) |
誓約書(様式第22号の6) | 合併に関する株主総会の決議録等 | 分割に関する株主総会の決議録等 |
譲渡・譲受けに関する契約書写し | 赤文字で記載されている書類は、合併存続法人が合併より新設される法人である場合は提出不要 | 赤文字で記載されている書類は、分割承継法人が新設分割により設立される法人である場合には提出不要 |
譲渡・譲受けに関する株主総会の決議録等 |
以下余白 | 以下余白 |
出典:国土交通省ウェブサイト
認可:相続の場合
相続をする場合、建設業者の死亡後30日以内に相続の認可の申請が必要となり、その際の提出書類は下記の通りです。
譲渡及び譲受け認可申請書 |
営業所一覧表 |
専任技術者一覧表 |
申請者と被相続人との関係を証する書類 |
工事経歴書 |
直前3年の各事業年度における工事施工金額 |
使用人数 |
誓約書(第6号) |
成年被後見人及び被保佐人に該当しない旨の登記事項証明書 |
成年被後見人又は被保佐人とみなされる者に該当せず、また、破産者で復権を得ないものに該当しない旨の市町村の長の証明書 |
常勤役員等(経営業務の管理責任者等)証明書 |
常勤役員等の略歴書 |
常勤役員等及び当該常勤役員等を直接に補佐する者の証明書 |
常勤役員等の略歴書 |
常勤役員等を直接に補佐する者の略歴書 |
誓約書(第22号の11) |
建設業法施行令3条に規定する使用人の一覧表 |
許可申請者(法人の役員等・本人・法定代理人・法定代理人の役員等)の住所、生年月日等に関する調書 |
建設業法施行令第3条に規定する使用人の住所、生年月日等に関する調書 |
貸借対照表 |
損益計算書 |
登記事項証明書 |
営業の沿革 |
所属建設業者団体 |
納税証明書(納付すべき額及び納付済額) |
主要取引金融機関名 |
当該申請者以外の相続人の同意書 |
譲渡・合併・分割・相続ともに、認可された場合は空白期間なく事業の継続が可能となります。
しかし不認可の場合、以後の手続きがどうなるのか、『元々の許可に付されていた条件の変更や新たな条件の付与が可能』ということ以外、現在時点では不明です(2020.10.9)。
譲渡・合併・分割の場合は、手続きがスムーズに進むだろうということは想像に難くないのですが、相続の場合、30日以内というのは大きなハードルではないかと思います。
仮に、不認可の場合や期限に間に合わなかった場合、これまでの『事業承継』という形がそのまま残っているのか、期限までに提出が為されなかった場合は新規申請しか選択肢がなくなってしまうのか。
30日以内と言うのは難しい場合もあるので、受け皿として事業承継の申請は残していただけると有り難いかなぁ...と思うわけでありますが。
相続認可についての新たな情報です。
『相続』という文言が付くので、一般的な相続と何ら変わりなく、事業を引き継ぐためには相続人全員の承諾が必要になる。とのことです。
被相続人の死亡後30日以内に相続人全員の承諾を得、認可を申請...というのは現実的には無理ではないかと思われます。
しかし、事業承継の手続きは現行のまま継続、ということでしたので、一安心ですね。
認可においては、手数料(証紙・印紙)は無料です。
出典:国土交通省ウェブサイト
でも、ちょっと待って!法人成と事業継承の手続きがなくならないワケ
かつて「法人成」や「事業継承」の煩雑な手続きをしなければ許可番号を引き継ぐことができなかった申請が「認可申請」を活用することで
*手数料ゼロ円!
*面倒な引き継ぎアリの財務諸表作成の手間が省ける!
という画期的な申請だということで、現在は「認可申請」によって許可番号を引き継ぐことがポピュラーな手法となりました。
こんなに便利でお安く許可番号が引き継げるなら、従来の「法人成」や「事業継承」の手続きはなくなってもいいのでは?
...そう、私も最近までそう思っておりました。
譲渡をするには契約書を作成したり、場合によっては、固定資産を再評価したりと面倒な手続きを踏む場合もありますが、個人から法人、親から子への場合は、そこまで細かく設定しなくても認可申請は受け付けていただけます。
手数料ゼロ!面倒な財務諸表不要!これは非常に喜ばしいことなのですが、これは経審ナシの業者様に限ります。
譲渡の場合、経審がめちゃくちゃ煩雑になります。
会社同士の合併や、分割なら経審が煩雑でも諦めがつきますが、個人から法人成、親子譲渡でも「譲渡」になってしまうと、会社合併時並みの財務諸表・完工高清算表が必要になってしまいます。
実際手掛けてみて、これなら証紙代払っても「法人成」許可申請し、経審を受けた方が全然楽だと思いました。
特殊経審のコーナーで詳細は記載しますが、法人成や親子譲渡は身内での話なのに経審を受審する場合は「税理士の適正証明書」が必要になります。
唯一、適正証明書を添付せずに経審を受審できる方法は、「譲渡日と設立日を同じ日にすること」です。
こうすることで従来の「法人成」と同じカウントの仕方が可能になります。(譲渡日までの空白期間がなくなるため。)
設立から譲渡日までが空白期間になる場合に、譲渡時経審&第1期決算期における経審は、特殊計算(上乗せと按分)並びに税理士(公認会計士)の適正証明書が必要になりますので、煩雑な手続き回避したい場合は
*手数料(9万円)をかけて従来の法人成の申請をする
*譲渡日=設立日になるような手続きをする
の2択となります。
令和2年10月1日以降の申請について(経管)
従前と比較した場合、相違は下の表のようになります。
令和2年9月30日まで | 令和2年10月1日から |
イ該当
個人事業主・支配人のうち1人が許可を受けようとする建設業に関し5年以上経営業務の管理責任者としての経験を有する
執行役員等として経営業務を総合的に管理した経験を5年以上有する者 |
イ-1該当
イ-2該当 |
ロ該当
経験と異なる業種の許可を受ける場合、経営業務の管理責任者としての経験を6年以上有する者 |
イ-3該当 |
経営業務の管理責任者の要件を、1名でクリアできる場合はイ該当ということになります。
また、現在の地位が取締役でない場合(部長等)でも経管に成り得ます。
ただ、余程大きな会社でその部署でしか建設工事を行っていない場合、くらいしか該当しないと思いますが。
ロ該当が大きく変わります。
ロ該当は1人一役の場合は4名で経営業務の管理責任者の要件をクリアする、というスタイルになります。
(ABCの要件を1名でクリアできる場合もございます。最少で2名、最多で4名必要になります。)
下の表の通りです。
ロ-1 | 建設業の役員等の経験2年以上を含む5年以上の建設業の役員等または役員等に次ぐ職制上の地位(財務管理・労務管理または業務運営を担当する者に限る)における経験を有する者を経営業務の管理責任者とする。 |
A:補佐する者として、許可申請等を行う建設業者等において5年以上の財務管理の経験を有すること
B:補佐する者として、許可申請等を行う建設業者等において5年以上の労務管理の経験を有すること
C:補佐する者として、許可申請等を行う建設業者等において5年以上の運営業務の経験を有すること |
ロ-2 |
建設業の役員等の経験2年以上を含む5年以上の役員等の経験を有する者を経営業務の管理責任者とする。 |
A:補佐する者として、許可申請等を行う建設業者等において5年以上の財務管理の経験を有すること
B:補佐する者として、許可申請等を行う建設業者等において5年以上の労務管理の経験を有すること
C:補佐する者として、許可申請等を行う建設業者等において5年以上の運営業務の経験を有すること |
ロ-1は、建設業についての役員経験が2年あり、他3年間は建設業についての執行役員又は財務管理・労務管理・運営業務経験があり、合計で5年、それを証明できれば経管に成り得ます。
ただし、その場合はABC全ての要件をクリアできる補佐する者を付けなければなりません。という事です。
ここでいう『補佐する者』については、申請する法人又は個人事業所に5年以上在籍+上記の業務を担当していることが条件となります。
従って、新設法人ではこの証明形式は使えないということになります。
「財務管理」・「労務管理」及び「業務運営」に関する経験については下記のような定義になります。
建設工事を施工するにあたって必要な資金の調達や施工中の資金繰りの管理、下請業者への代金の支払いなどを行う部署におけるこれらの業務経験を言います。
社内や工事現場における勤怠の管理や社会保険関係の手続きを行う部署におけるこれらの業務経験を言います。
会社の経営方針や運営方針を策定、実施する部署におけるこれらの業務経験を言います。
他、社会保険の記号番号が発行されてからでないと(適用除外を除く)許可申請書の受付をしていただけなくなりました。
これまでは、雇用保険について加入できる年齢に制限があり、例えば後期高齢者に該当する方が経管や専任技術者になる場合は、その常勤性を証明できるものが源泉徴収簿(賃金台帳)のみの場合、最低賃金以上の額を支払っていることを証明できたときに限り常勤性を認めておりましたが、令和2年10月以降は雇用保険の年齢制限が撤廃されたため、賃金の最低額は問わないということになりました。
しかし加入できない方について、常勤性を証明する書類が源泉徴収簿(賃金台帳)しかない場合は、これまで通り最低賃金以上の額を3ヶ月以上支払っていることを証明する必要がございます。
出典:国土交通省ウェブサイト
配置技術者
これまで2級の第2次検定合格者は、5年の実務経験後でなければ1級の学科試験及び実地試験を受験することが出来ませんでした。
改正後は、これを見直すこととし、2級の第2次検定合格後に1級1次検定を受験可能にし、合格後に所定の実務経験を積んだ後、1級の第2次検定を受験する、という流れに制度が改正されます。
1級の1次検定合格者を1級の技士補とし、第2次検定に合格後に技士の資格が付与されます。
これまでは、建設工事の請負代金の額が3,500万円以上(建築一式工事は7,000万円以上)である場合については監理技術者は専任の者でなければなりませんでした。
改正後は、監理技術者の職務を補佐する者として、政令で定める者を専任で置いた場合には、監理技術者の兼務(当面は2現場とする)を認めることとなりました。
政令で定める者とは、技士補制度のうち
@ 1級の技士補であること
A 尚且つ主任技術者の資格を持つ者
となります。
有資格者または指定学科卒業+所定の年数の実務経験者、又は請負う工事業に関して10年以上の実務経験者となります。
指定学科以外の卒業の場合、主任技術者になるためには10年以上の実務経験が必要です。
従って、指定学科以外卒で1級の1次試験の受験資格が有り、合格した方は技術者として現場に配置はできません。
大学卒業者及び専門学校卒業者(「高度専門士」に限る)の指定学科以外卒で、卒業後4年6月以上10年未満の経験を以って合格された方。
短期大学卒業者又は高等専門学校卒業者又は専門学校卒業者(「専門士」に限る)の指定学科以外卒で、卒業後7年6月以上10年未満の経験を以って合格された方。
繰り返しますが、指定学科以外の卒業の場合、主任技術者になるためには10年以上の実務経験が必要です。
以上により、これまでは監理技術者を各現場に配置しなければならなかった部分を、1級一次試験合格者(技士補)を配置することで、監理技術者は2現場につき1名でOK、ということになります。
出典:国土交通省ウェブサイト
特定専門工事の創設
政令で定める特定専門工事は、土木一式工事又は建築一式工事以外の建設工事のうち、施工技術が画一的であり、かつ、施工の技術上の管理の効率化を図る必要があるものとして
鉄筋工事及び型枠工事 を対象としました。
そういうものだと思って納得してください。
政令で定める額未満=3500万円です。
工事を注文する者(一次下請)と請負う者(二次下請)が以下の事項を記載した書面において合意をする必要がございます。
@ 特定専門工事の内容
A 上位下請の置く主任技術者の氏名
B その他国土交通省令で定める事項
この際、一次下請業者は、注文者の書面による承諾を必要とします。
現状では、一次下請が置く主任技術者による技術上の施工管理のみで適正に施工される場合であっても、全ての下請(二次下請・三次下請〜と続く)がそれぞれに主任技術者を置くことが必要でした。
発注者
↓
元請(監理又は主任技術者)
↓
一次下請(主任技術者)
↓
二次下請(主任技術者)
改正建設業法では、一次下請及び二次下請は、その合意により一次下請業者が工事現場に置く主任技術者が、本来行うべき技術上の施工管理と併行して二次下請業者の主任技術者が行うべき技術上の施工管理を行う場合は、二次下請業者は当該工事現場に主任技術者を置くことを要しない、としました。
発注者
↓
元請(監理又は主任技術者)
↓
一次下請(主任技術者)
↓
二次下請
ただし、一次下請業者の主任技術者は、
一定の指導監督的な実務経験があり、かつ、当該工事現場に専任で置かれる者でなければなりません。
以上により、
元請業者は、自社の施工分を超える業務量に対応しやすくなる、というメリットが生まれます。
下請業者は、主任技術者が不足する懸念がなくなるため、
受注の機会を確保しやすくなる、というメリットが生まれます。
ただ、主任技術者を置かない下請業者はそこから再下請を置くことはできません。
出典:国土交通省ウェブサイト
工期・標識
注文者は、その注文した建設工事を施工するために通常必要と認められる期間に比して著しく短い期間を工期とする請負契約を締結してはならない。としました。
著しく短い工期...というのがどの程度なのか、これだけだと全くわかりませんね。
@ 休日や雨天による不稼働日など、中央建設業審議会において作成した工期に関する基準で示した事項が考慮されているかどうかを確認する。
A 過去の同種類似工事の実績と比較する。
B 建設業者が提出した工期の見積もりの内容を精査する。
上記のようなことを行い、許可行政庁が工事ごとに個別に判断するものとする。
建設工事の施工に当たっては、様々な事情が複雑に絡んでくるので、一概に言えない部分は多々ありますよね。
@ 公共工事の場合(入契法)
建設工事の受注者(元請)が下請業者と著しく短い工期で下請契約を締結している、と疑われる場合は、当該工事の発注者は当該受注者の許可行政庁にその旨を通知しなければならない。
公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律です。
『○ん○○』と『○るな○』を防止することが目的となっております。
その中で、入札の透明性の確保・業者間の公正な競争を促す・きちんとした請負体制を徹底する・不正行為が明るみにでた場合は厳しく処罰する、ということを盛り込んでおります。
A 国土交通大臣等は、著しく短い工期で契約を締結した発注者に対して、勧告を行うことができ、従わない場合はその旨を公表することができる。
B 建設工事の注文者が建設業者である場合、国土交通大臣等は建設業法第41条を根拠とする勧告や、第28条を根拠とする指示処分を行う。
働き方改革により就労形態が変化していく中、週休2日を考慮に入れた上で工期の設定をしたり、柔軟に契約の変更を出来るようにすることで余裕のある工期を設定する、これらを盛り込むことで人材を確保し、技能者を育成、建設業界での労働人口の増加を図りたいという狙いもあるかと思います。
ただ、現状を変えるのは難しく、ほとんどの建設業者様はしばらくは動向観察、といったところなのかもしれません。
これまでは、元請業者から1次・2次・3次...と、その工事現場に入る業者はすべて建設業の許可証(元請は施工体系図も)の掲示が義務付けられておりました。
改正建設業法ではこれを緩和し、建設業の許可証を掲示するのは元請業者のみとする、ということになりました。
しかし、下請業者にどのような業者が入っているのかを明らかにする必要があるため、施工体系図の記載事項の改正について現在検討中、ということです。
出典:国土交通省ウェブサイト
建設業法令遵守ガイドラインの改訂
下請代金の支払手段について、平成19年6月に策定されて以降、改訂を重ねてきましたが、令和3年7月に更に細かい部分について改訂が為されました。
このガイドラインは、元請負人と下請負人との関係において、どのような行為が建設業法に違反するかを具体的に示すことで「法律の不知」による法令違反行為を防ぎ、元請負人と下請負人との関係を対等に構築、公正かつ透明な取引の実現を図ることを目的として策定されたものです。
昔は、手形の満期が6ヶ月先だったり、現金で支払う場合は手形の額面を満額として6ヶ月分の支払利息分を値引きされたり、どう転んでも赤字になってしまう金額での請負等...あまり良いとは言えない待遇で仕事をされていた方も多かったようです。
昨今の人手不足もこれでは改善が難しいということで、下請代金支払遅延等防止法及び下請中小企業振興法の趣旨に鑑み、「下請代金の支払手段について」(令和3年3月31日20210322中庁第2号・公取企第25号)において、下請取引の適正化に努めるよう要請されているため、元請負人はこの点についても留意しなければならない。としました。
@ 下請代金の支払は、できる限り現金によるものとすること。
A 手形等により下請代金を支払う場合には、当該手形等の現金化にかかる割引料等のコストが下請事業者の負担とすることのないよう、これを勘案した下請代金の額を親事業者と下請事業者で十分協議して決定すること。
更に↓
当該協議を行う際、親事業者と下請事業者の双方が、手形等の現金化にかかる割引料等のコストについて具体的に検討できるように、親事業者は支払期日に現金により支払う場合の下請代金の額並びに支払期日に手形等により支払う場合の下請代金の額及び当該手形等の割引料等のコストを示すこと。としました。
B 下請代金の支払に係る手形等のサイトについては、60日以内とすること。
平成19年6月の策定時は、確か4ヶ月程度の期限だったような記憶があるので、これはかなり短縮されたと思います。
様々な分野で叫ばれておりますが、建設業界も例外ではありません。
現在、建設業界の技術者の約4割が4週間のうち4日以下の休日しか取れておりません。
年間の実働時間については、2020年度で出勤日数244日、実労働時間1,985時間が平均となっており、全産業と比較して約2割長い結果となっております。
これを改善し、週休2日を確保できるように適正な工期設定や経費補正が令和2年度より実施されております。
令和6年4月より、労働時間オーバーは罰則の対象となります。
帳簿の備付け・保存及び営業に関する図書の保存(建設業法第40条の3)
改正建設業法によるものではありませんが、最近この部分について強化されている傾向があり、実態調査が行われる際には必ずチェックが入るものなので、ここに記載したいと思います。
建設業法第40条の3では、建設業者は営業所ごとに、営業に関する事項を記録した帳簿を備え、5年間(平成21年10月1日以降については、発注者と締結した住宅を新築する建設工事に係るものにあっては、10年間。)保存しなければならないとされています。
@ 営業所の代表者の氏名及びその者が営業所の代表者となった年月日
A 注文者と締結した建設工事の請負契約に関する事項
*請け負った建設工事の名称及び工事現場の所在地
*注文者と請負契約を締結した年月日
*注文者の商号・名称(氏名)、住所、許可番号
*請け負った建設工事の完成を確認するための検査が完了した年月日
*工事目的物を注文者に引渡した年月日
B 発注者(宅地建物取引業者を除く。)と締結した住宅を新築する建設工事の請負契約に関する事項
*当該住宅の床面積
*建設瑕疵負担割合(発注者と複数の建設業者の間で請負契約が締結された場合)
*住宅瑕疵担保責任保険法人の名称(資力確保措置を保険により行った場合)
C 下請負人と締結した下請契約に関する事項
*下請負人に請け負わせた建設工事の名称及び工事現場の所在地
*下請負人と下請契約を締結した年月日
*下請負人の商号・名称、住所、許可番号
*下請負人に請け負わせた建設工事の完成を確認するための検査を完了した年月日
*下請工事の目的物について下請負人から引渡しを受けた年月日
D 特定建設業者が注文者となって資本金4,000 万円未満の法人又は個人である一般建設業者と下請契約を締結したときは、上記の記載事項に加え、以下の事項
*支払った下請代金の額、支払年月日及び支払手段
*支払手形を交付したとき…その手形の金額、交付年月日及び手形の満期
*下請代金の一部を支払ったとき…その後の下請代金の残額
*遅延利息を支払ったとき…その額及び支払年月日
※上記の帳簿は電磁的記録によることも可能です。
帳簿には、契約書若しくはその写し又はその電磁的記録を添付しなければならない(建設業法施行規則第26条第2項、第6項)。
また、以下の場合にはこれらの書類に加え、次のそれぞれの書類を添付します。
ア 特定建設業者が注文者となって資本金4,000 万円未満の法人又は個人である一般建設業者と下請契約を締結した場合は、下請負人に支払った下請代金の額、支払年月日及び支払手段を証明する書類(領収書等)又はその写しを添付
イ 特定建設業者が元請工事について、3,000 万円(建築一式工事の場合 4,500万円。一次下請負人への下請代金の総額で判断。)以上の下請契約を締結した場合は、工事完成後(建設業法施行規則第26条第3項)に施工体制台帳のうち以下に掲げる事項が記載された部分を添付。
*自社が実際に工事現場に置いた監理技術者の氏名及びその有する監理技術者資格
*自社が監理技術者以外に専門技術者を置いたときは、その者の氏名、その者が管理をつかさどる建設工事の内容及びその有する主任技術者資格
*下請負人の商号又は名称及び許可番号
*下請負人に請け負わせた建設工事の内容及び工期
*下請負人が実際に工事現場に置いた主任技術者の氏名及びその有する主任技術者資格
*下請負人が主任技術者以外に専門技術者を置いたときは、その者の氏名、その者が管理をつかさどる建設工事の内容及びその有する主任技術者資格
発注者から直接建設工事を請け負った場合は、営業所ごとに、以下の営業に関する図書を当該建設工事の目的物の引渡をしたときから10年間保存しなければならないとされています。(建設業法施行規則第26条第5項、第8項、第28条第2項)
@ 完成図(建設業者が作成した場合又は発注者から受領した場合のみ。)
A 工事内容に関する発注者との打ち合わせ記録(相互に交付したものに限る。)
B 施工体系図(発注者から直接請け負った建設工事について、3,000 万円(建築一式工事の場合 4,500 万円。一次下請負人への下請代金の総額で判断。)以上の下請契約を締結した特定建設業者の場合のみ。
任意様式で構いませんので、必ず備え付けるようにしてくださいね。