令和2年10月1日、建設業許可申請やその他の手続きが一部改正されました。

行政書士 神尾智子 事務所


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令和2年10月1日以降の申請について(経管)

改正建設業法についての情報が公開されました。

 

主な改正点は
経営業務の管理責任者・認可制度・配置技術者・工期及び標識
の4点です。

経営業務の管理責任者

従前と比較した場合、相違は下の表のようになります。
   

令和2年9月30日まで 令和2年10月1日から

イ該当
法人の役員のうち常勤である者の1人が許可を受けようとする建設業に関し5 年以上経営業務の管理責任者としての経験を有するイ-1

 

個人事業主・支配人のうち1人が許可を受けようとする建設業に関し5 年以上経営業務の管理責任者としての経験を有するイ-1

 

執行役員等として経営業務を総合的に管理した経験を5年以上有する者イ-2

イ-1該当
建設業に関し5年以上の経営業務の管理者としての経験を有する者

 

イ-2該当
建設業に関し経営業務の管理責任者に準ずる地位として5年以上経営業務を管理した経験を有する者

ロ該当
許可を受けようとする建設業の経営経験の補佐経験を6年以上有する者イ-3

 

経験と異なる業種の許可を受ける場合、経営業務の管理責任者としての経験を6年以上有する者イ-1

イ-3該当
建設業に関し経営業務の管理責任者に準ずる地位として6年以上経営業務の管理責任者を補助する業務に従事した経験を有する者

 

経営業務の管理責任者の要件を、1名でクリアできる場合はイ該当ということになります。
ロ該当が大きく変わります。
ロ該当は1人一役の場合は4名で経営業務の管理責任者の要件をクリアする、というスタイルになります。
(ABCの要件を1名でクリアできる場合もございます。最少で2名、最多で4名必要になります。)
下の表の通りです。

ロ-1 建設業の役員等の経験2年以上を含む5年以上の建設業の役員等または役員等に次ぐ職制上の地位(財務管理・労務管理または業務運営を担当する者に限る)における経験を有する者を経営業務の管理責任者とする。

A:補佐する者として、許可申請等を行う建設業者等において5年以上の財務管理の経験を有すること

 

B:補佐する者として、許可申請等を行う建設業者等において5年以上の労務管理の経験を有すること

 

C:補佐する者として、許可申請等を行う建設業者等において5年以上の運営業務の経験を有すること

ロ-2

建設業の役員等の経験2年以上を含む5年以上の役員等の経験を有する者を経営業務の管理責任者とする。

A:補佐する者として、許可申請等を行う建設業者等において5年以上の財務管理の経験を有すること

 

B:補佐する者として、許可申請等を行う建設業者等において5年以上の労務管理の経験を有すること

 

C:補佐する者として、許可申請等を行う建設業者等において5年以上の運営業務の経験を有すること

ロ-1は、建設業についての役員経験が2年あり、他3年間は建設業についての執行役員又は財務管理・労務管理・運営業務経験があり、合計で5年、それを証明できれば経管に成り得ます。
ただし、その場合はABC全ての要件をクリアできる補佐する者を付けなければなりません。という事です。

 

ここでいう『補佐する者』については、申請する法人又は個人事業所に5年以上在籍+上記の業務を担当していることが条件となります。

 

従って、新設法人ではこの証明形式は使えないということになります。

 

「財務管理」・「労務管理」及び「業務運営」に関する経験については下記のような定義になります。

財務経験

建設工事を施工するにあたって必要な資金の調達や施工中の資金繰りの管理、下請業者への代金の支払いなどを行う部署におけるこれらの業務経験を言います。

労務経験

社内や工事現場における勤怠の管理や社会保険関係の手続きを行う部署におけるこれらの業務経験を言います。

業務運営

会社の経営方針や運営方針を策定、実施する部署におけるこれらの業務経験を言います。

 

 

他、社会保険の記号番号が発行されてからでないと(適用除外を除く)許可申請書の受付をしていただけなくなりました。

認可制度(譲渡・合併・分割)

認可制度

これまでは、建設業者が事業の譲渡・会社の合併・分割を行った場合には、譲渡・合併・分割後に新たに建設業許可を取り直すことが必要でした。

 

許可証交付までは建設業を営むことができない空白期間が生じるため、不利益を被った業者様が数多く存在した事実がございます。

 

そこで、今回の改正建設業法では事業承継の規定を整備し、事前の認可を受けることで建設業の許可を承継することが可能になりました。

事業譲渡等の場合

認可に基づく許可の付与については、以下の条件が前提となります。

譲渡契約書があること
合併契約書があること
分割契約書があること

提出書類は下記のようになります。

譲渡及び譲受け 合併 分割
譲渡及び譲受け認可申請書 譲渡及び譲受け認可申請書 分割認可申請書
役員等の一覧表 役員等の一覧表 役員等の一覧表
営業所一覧表 営業所一覧表 営業所一覧表
専任技術者一覧表 専任技術者一覧表 専任技術者一覧表
工事経歴書 合併の方法及び条件が記載された書類 分割の方法及び条件が記載された書類
直前3年の各事業年度における工事施工金額 工事経歴書 工事経歴書
使用人数 直前3年の各事業年度における工事施工金額 直前3年の各事業年度における工事施工金額
誓約書(様式第6号) 使用人数 使用人数
成年被後見人及び被保佐人に該当しない旨の登記事項証明書 誓約書(様式第6号) 誓約書(様式第6号)
成年被後見人又は被保佐人とみなされる者に該当せず、また、破産者で復権を得ないものに該当しない旨の市町村の長の証明書 成年被後見人及び被保佐人に該当しない旨の登記事項証明書 成年被後見人及び被保佐人に該当しない旨の登記事項証明書
常勤役員等(経営業務の管理責任者等)証明書(イ該当) 成年被後見人又は被保佐人とみなされる者に該当せず、また、破産者で復権を得ないものに該当しない旨の市町村の長の証明書 成年被後見人又は被保佐人とみなされる者に該当せず、また、破産者で復権を得ないものに該当しない旨の市町村の長の証明書
常勤役員等の略歴書(別紙) 常勤役員等(経営業務の管理責任者等)証明書(イ該当) 常勤役員等(経営業務の管理責任者等)証明書(イ該当)
常勤役員等及び当該常勤役員等を直接に補佐する者の証明書(ロ該当) 常勤役員等の略歴書(別紙) 常勤役員等の略歴書(別紙)
常勤役員等の略歴書(別紙1) 常勤役員等及び当該常勤役員等を直接に補佐する者の証明書(ロ該当) 常勤役員等及び当該常勤役員等を直接に補佐する者の証明書(ロ該当)
常勤役員等を直接に補佐する者の略歴書(別紙2) 常勤役員等の略歴書(別紙1) 常勤役員等の略歴書(別紙1)
建設業法施行令3条に規定する使用人の一覧表 常勤役員等を直接に補佐する者の略歴書(別紙2) 常勤役員等を直接に補佐する者の略歴書(別紙2)
許可申請者(法人の役員等・本人・法定代理人・法定代理人の役員等)の住所、生年月日等に関する調書

建設業法施行令3条に規定する使用人の一覧表

建設業法施行令3条に規定する使用人の一覧表

建設業法施行令第3条に規定する使用人の住所、生年月日等に関する調書 許可申請者(法人の役員等・本人・法定代理人・法定代理人の役員等)の住所、生年月日等に関する調書 許可申請者(法人の役員等・本人・法定代理人・法定代理人の役員等)の住所、生年月日等に関する調書
定款 建設業法施行令第3条に規定する使用人の住所、生年月日等に関する調書 建設業法施行令第3条に規定する使用人の住所、生年月日等に関する調書
株主(出資者)調書 定款 定款
貸借対照表(法人) 株主(出資者)調書 株主(出資者)調書
損益計算書・完成工事原価報告書(法人) 貸借対照表 貸借対照表
株主資本等変動計算書(法人) 損益計算書・完成工事原価報告書 損益計算書・完成工事原価報告書
注記表(法人) 注記表 注記表
附属明細表(法人) 附属明細表 附属明細表
貸借対照表(個人) 登記事項証明書 登記事項証明書
損益計算書(個人) 営業の沿革 営業の沿革
登記事項証明書 所属建設業者団体 所属建設業者団体
営業の沿革

納税証明書
(納付すべき額及び納付済額)

納税証明書
(納付すべき額及び納付済額)

所属建設業者団体 主要取引金融機関名 主要取引金融機関名

納税証明書
(納付すべき額及び納付済額)

誓約書(様式第22号の6) 誓約書(様式第22号の6)
主要取引金融機関名 合併契約書の写し及び合併比率説明書 分割契約書の写し及び分割比率説明書(新設分割の場合には、分割計画書)
誓約書(様式第22号の6) 合併に関する株主総会の決議録等 分割に関する株主総会の決議録等
譲渡・譲受けに関する契約書写し 赤文字で記載されている書類は、合併存続法人が合併より新設される法人である場合は提出不要 赤文字で記載されている書類は、分割承継法人が新設分割により設立される法人である場合には提出不要
譲渡・譲受けに関する株主総会の決議録等 以下余白 以下余白

認可:相続の場合

相続をする場合、建設業者の死亡後30日以内に相続の認可の申請が必要となり、その際の提出書類は下記の通りです。

譲渡及び譲受け認可申請書
営業所一覧表
専任技術者一覧表
申請者と被相続人との関係を証する書類
工事経歴書
直前3年の各事業年度における工事施工金額
使用人数
誓約書(第6号)
成年被後見人及び被保佐人に該当しない旨の登記事項証明書
成年被後見人又は被保佐人とみなされる者に該当せず、また、破産者で復権を得ないものに該当しない旨の市町村の長の証明書
常勤役員等(経営業務の管理責任者等)証明書
常勤役員等の略歴書
常勤役員等及び当該常勤役員等を直接に補佐する者の証明書
常勤役員等の略歴書
常勤役員等を直接に補佐する者の略歴書
誓約書(第22号の11)
建設業法施行令3条に規定する使用人の一覧表
許可申請者(法人の役員等・本人・法定代理人・法定代理人の役員等)の住所、生年月日等に関する調書
建設業法施行令第3条に規定する使用人の住所、生年月日等に関する調書
貸借対照表
損益計算書
登記事項証明書
営業の沿革
所属建設業者団体
納税証明書(納付すべき額及び納付済額)
主要取引金融機関名
当該申請者以外の相続人の同意書

譲渡・合併・分割・相続ともに、認可された場合は空白期間なく事業の継続が可能となります。

 

しかし不認可の場合、以後の手続きがどうなるのか、『元々の許可に付されていた条件の変更や新たな条件の付与が可能』ということ以外、現在時点では不明です(2020.10.9)。

疑問点

譲渡・合併・分割の場合は、手続きがスムーズに進むだろうということは想像に難くないのですが、相続の場合、30日以内というのは大きなハードルではないかと思います。

 

仮に、不認可の場合や期限に間に合わなかった場合、これまでの『事業承継』という形がそのまま残っているのか、期限までに提出が為されなかった場合は新規申請しか選択肢がなくなってしまうのか。

 

30日以内と言うのは難しい場合もあるので、受け皿として事業承継の申請は残していただけると有り難いかなぁ...と思うわけでありますが。

 

2020.10.30

相続認可についての新たな情報です。
『相続』という文言が付くので、一般的な相続と何ら変わりなく、事業を引き継ぐためには相続人全員の承諾が必要になる。とのことです。

 

被相続人の死亡後30日以内に相続人全員の承諾を得、認可を申請...というのは現実的には無理ではないかと思われます。

 

しかし、事業承継の手続きは現行のまま継続、ということでしたので、一安心ですね。

 

認可においては、手数料(証紙・印紙)は無料です。

配置技術者

技士補の創設

これまで2級の第2次検定合格者は、5年の実務経験後でなければ1級の学科試験及び実地試験を受験することが出来ませんでした。

 

改正後は、これを見直すこととし、2級の第2次検定合格後に1級1次検定を受験可能にし、合格後に所定の実務経験を積んだ後、1級の第2次検定を受験する、という流れに制度が改正されます。

 

1級の1次検定合格者を1級の技士補とし、第2次検定に合格後に技士の資格が付与されます。

監理技術者の専任の緩和

これまでは、建設工事の請負代金の額が3,500万円以上(建築一式工事は7,000万円以上)である場合については監理技術者は専任の者でなければなりませんでした。

 

改正後は、監理技術者の職務を補佐する者として、政令で定める者を専任で置いた場合には、監理技術者の兼務(当面は2現場とする)を認めることとなりました。

 

政令で定める者とは、技士補制度のうち

 

@ 1級の技士補であること
A 尚且つ主任技術者の資格を持つ者

 

となります。

主任技術者

有資格者または指定学科卒業+所定の年数の実務経験者、又は請負う工事業に関して10年以上の実務経験者となります。

 

経審の技術職員名簿に氏名を記載できる方、という方が解りやすいかもしれませんね。

 

以上により、これまでは監理技術者を各現場に配置しなければならなかった部分を、1級一次試験合格者(技士補)を配置することで、監理技術者は2現場につき1名でOK、ということになります。

特定専門工事の創設

対象とする工事

政令で定める特定専門工事は、土木一式工事又は建築一式工事以外の建設工事のうち、施工技術が画一的であり、かつ、施工の技術上の管理の効率化を図る必要があるものとして

 

鉄筋工事及び型枠工事 を対象としました。

 

何故?

そういうものだと思って納得してください。

 

下請契約の請負代金の額

政令で定める額未満=3500万円です。

 

手続きについて

工事を注文する者(一次下請)と請負う者(二次下請)が以下の事項を記載した書面において合意をする必要がございます。

 

@ 特定専門工事の内容
A 上位下請の置く主任技術者の氏名
B その他国土交通省令で定める事項

 

この際、一次下請業者は、注文者の書面による承諾を必要とします。

主任技術者の配置

現状では、一次下請が置く主任技術者による技術上の施工管理のみで適正に施工される場合であっても、全ての下請(二次下請・三次下請〜と続く)がそれぞれに主任技術者を置くことが必要でした。

 

発注者
 ↓
元請(監理又は主任技術者)
 ↓
一次下請(主任技術者)
 
二次下請(主任技術者)

 

改正建設業法では、一次下請及び二次下請は、その合意により一次下請業者が工事現場に置く主任技術者が、本来行うべき技術上の施工管理と併行して二次下請業者の主任技術者が行うべき技術上の施工管理を行う場合は、二次下請業者は当該工事現場に主任技術者を置くことを要しない、としました。

 

発注者
 ↓
元請(監理又は主任技術者)
 ↓
一次下請(主任技術者)
 
二次下請

 

ただし、一次下請業者の主任技術者は、
一定の指導監督的な実務経験があり、かつ、当該工事現場に専任で置かれる者でなければなりません。

 

以上により、
元請業者は、自社の施工分を超える業務量に対応しやすくなる、というメリットが生まれます。

 

下請業者は、主任技術者が不足する懸念がなくなるため、
受注の機会を確保しやすくなる、というメリットが生まれます。

 

ただ、主任技術者を置かない下請業者はそこから再下請を置くことはできません。

工期・標識

工期の適正化
著しく短い工期による請負契約の締結を禁止

注文者は、その注文した建設工事を施工するために通常必要と認められる期間に比して著しく短い期間を工期とする請負契約を締結してはならない。としました。

 

著しく短い工期...というのがどの程度なのか、これだけだと全くわかりませんね。

 

判断基準は?

@ 休日や雨天による不稼働日など、中央建設業審議会において作成した工期に関する基準で示した事項が考慮されているかどうかを確認する。

 

A 過去の同種類似工事の実績と比較する。

 

B 建設業者が提出した工期の見積もりの内容を精査する。

 

上記のようなことを行い、許可行政庁が工事ごとに個別に判断するものとする。

 

建設工事の施工に当たっては、様々な事情が複雑に絡んでくるので、一概に言えない部分は多々ありますよね。

違反した場合

@ 公共工事の場合(入契法)
建設工事の受注者(元請)が下請業者と著しく短い工期で下請契約を締結している、と疑われる場合は、当該工事の発注者は当該受注者の許可行政庁にその旨を通知しなければならない。

 

入契法

公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律です。

 

『○ん○○』『○るな○』を防止することが目的となっております。

 

その中で、入札の透明性の確保・業者間の公正な競争を促す・きちんとした請負体制を徹底する・不正行為が明るみにでた場合は厳しく処罰する、ということを盛り込んでおります。

 

 

A 国土交通大臣等は、著しく短い工期で契約を締結した発注者に対して、勧告を行うことができ、従わない場合はその旨を公表することができる。

 

B 建設工事の注文者が建設業者である場合、国土交通大臣等は建設業法第41条を根拠とする勧告や、第28条を根拠とする指示処分を行う。

 

働き方改革により就労形態が変化していく中、週休2日を考慮に入れた上で工期の設定をしたり、柔軟に契約の変更を出来るようにすることで余裕のある工期を設定する、これらを盛り込むことで人材を確保し、技能者を育成、建設業界での労働人口の増加を図りたいという狙いもあるかと思います。

 

ただ、現状を変えるのは難しく、ほとんどの建設業者様はしばらくは動向観察、といったところなのかもしれません。

標識の掲示義務の緩和

これまでは、元請業者から1次・2次・3次...と、その工事現場に入る業者はすべて建設業の許可証(元請は施工体系図も)の掲示が義務付けられておりました。

 

改正建設業法ではこれを緩和し、建設業の許可証を掲示するのは元請業者のみとする、ということになりました。

 

しかし、下請業者にどのような業者が入っているのかを明らかにする必要があるため、施工体系図の記載事項の改正について現在検討中、ということです。

押印廃止

令和3年1月1日より

建設業許可申請書・決算終了後の変更届出書・その他の変更届出書・経営規模等評価申請書において、押印不要となりました。

 

建設業許可申請書における添付書類(原本証明・申立書等)についても同様です。

 

これにより、提出時の本人確認を徹底することになりました。

 

と言いましても、行政書士が出向く場合は今までと何の相違もございません。

 

問題は、それ以外の方が出向く場合ですね。

 

まだ制度が始まったばかりですので、トラブル等が起きた場合はその都度変更が加えられるものと思われます。(2021.1.20)

 

これまで、静岡県では許可申請や様式22号の2の変更届出書の提出時には『印鑑証明書の写し』が添付書類に含まれておりましたが、押印廃止に伴い不要となりました。

 

ただ、納税証明書の交付申請は、これまで通り押印必須です。

☆ Last Update :
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