建設キャリアアップシステム登録代行 今後の見通しについて

行政書士 神尾智子 事務所

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令和5年度からすべての工事がCCUSでの管理に移行します。

建設キャリアアップシステムの普及と活用に向け、令和5年度から建退共・作業員名簿・官民発注のすべての工事において、CCUSでの管理に完全移行させるための取り組みが始まっております。

 

静岡県では、令和.3・4年度入札参加資格より、建設キャリアアップシステムで事業者登録をしている建設業者に対し、10点加点されることとなり、令和2年6月からは、総合評価落札方式の公告案件において建設キャリアアップシステムの活用について加点項目に追加されることとなりました。

 

当事務所のお客様においても、建キャリへの登録がぼちぼち進んでおります。

 

しかし、現段階では自社よりも上位の業者様が登録していないと、きちんと反映しているとは言い難く、就業履歴を蓄積している...というよりは、タダの出勤簿という状態になってしまっているのが実態です。(出勤・退勤の状態しか確認できない)

 

従って、事業者様がきちんと事業者登録をし、更に各現場や工事ごとに実態に沿ったデータ(工事名・工期・携わっている技能者)を管理する必要がございます。

 

令和5年度からのCCUS完全実施に向けた具体案は下記の通りです。

 

建退共のCCUS活用への完全移行
社会保険加入確認のCCUS活用の原則化
国管轄での義務化モデル工事実施等、公共工事等での活用
建設技能者のレベルに応じた賃金支払いの実現

建退共のCCUS活用への完全移行

現行では

現在、建退共は証紙受払の書面管理方式であり、1人1人の技能者様への証紙の確実な交付及び貼付には限界があり、充当状況も正確に確認できません。

 

また、公共工事の積算で財源措置をされているにも関わらず、掛金充当が不徹底な状態にあります。

 

民間工事においては、労働者への掛金充当は更に不徹底な状態です。

CCUS活用方式では

そこで、令和3年度から技能者様自身がCCUSに蓄積した就労履歴データを活用した電子申請を本格実施し、令和5年度からCCUS活用に完全移行することで、就労実績を漏れなく建退共退職金の掛金充当につなげると共に、透明性も向上させることを目指しています。

 

つまり、カードタッチでCCUSに蓄積された就労実績を掛金充当に活用することを原則化することで、確実に掛金充当につなげることができる、という見込みです。

 

令和3年度から、公共工事での活用を徹底しつつ、令和5年度からは民間工事も含め、CCUS活用に完全移行の予定です。

導入のメリット

@ 技能者様が掛金充当を実感できる。
(今までも貼付することで実感はしてたと思いますが、『更に』という意味でしょうかね。)

 

A 証紙購入・交付貼付が不要になる。(これが一番大きいですかね。)

 

B 受払簿等の書類が不要・充当書が自動作成となる。

 

C 就労状況報告をメールで元請に直接提出可能になる。

 

D CCUSデータで就労状況報告書を自動作成することが可能となる。

 

令和5年度まで時間もそんなにありませんので、完全移行を目指すのであれば、CCUSへの登録を急がなければなりません。

公共工事における建退共の履行強化

同じことの復唱になりますが、令和3年度以降は、CCUS活用電子申請方式を推奨し、併せて証紙方式についても掛金納付額と充当状況にかかる履行確認を強化していくとのことです。

 

その際、必要に応じて許可行政庁も指導等に加わる予定となっております。

 

完全移行前の履行強化後は、受注者は発注毎にCCUS活用電子申請方式or証紙方式のいずれか一方を選択するものとします。

 

電子申請手続きについては、こちらに膨大な量の説明がございますのでご参照ください。

 

辞退届による辞退については、明確な根拠がない限り認めない運用となります。

不適切

以上を通じて、建退共の受託事務において、元請業者が不適切な処理を行っていることを公共工事における発注者が把握した場合には、適宜指導を実施するということです。

 

また、必要に応じて許可行政庁に通知し、許可行政庁が指導・助言・勧告等の措置を講ずることも視野に入れております。

 

まぁ...たまに聞きますけどね。証紙を渡してない、もらってない的なお話を...。現状、曖昧なことは事実なのでしょう。

社会保険加入確認のCCUS活用の原則化

国土交通省では、社会保険の加入に関する下請指導について、適切な社会保険の加入を確認できない技能者は、特段の理由がない限り現場への入場を認めないという方針を打ち出しています。

 

今般、改正建設業法の施行により、作業員名簿の作成・備付(提出)が義務化されることを契機に、ガイドラインを改正し、CCUSに登録された真正性の高い情報を活用し、効果的に社会保険加入の確認及び指導を行うことを原則としました。

 

これまでも社会保険未加入対策として、様々な段階的強化が行われて参りましたが、今後は下記のような取組が強化される予定です。

 

作業員名簿作成の義務化を契機に、元請企業による技能者の現場入場時の際の社会保険の加入状況の確認事務及び指導を強化。

確認の方法として、
@ CCUSの情報を活用し、元請企業が確認・指導を行う旨を明確化する。

A 書面による加入確認を行う場合は、社会保険の加入証明書の写し等による確認が必要である旨を明確化する。

 

ということです。

国管轄での義務化モデル工事実施等、公共工事等での活用

こちらは、国土交通省直轄工事のうち、既に建設キャリアアップシステムが導入されている工事を『モデル工事』として実施、建設キャリアアップシステムの活用を成果として特記仕様書及び入札説明書に明記するとともに、その達成状況に応じて工事成績評定において加点(減点)が施されております。

 

モデル工事は、

 

@ 下請けの登録事業者率・現場に入場する作業員の登録技能者率と就業履歴蓄積率に応じて工事成績を加点・減点する「義務化モデル工事」
A 工事成績の加点のみとなる「推奨モデル工事」

 

の2類型で試行されます。

 

@の対象工事

一般土木工事(WTO対象工事)が対象です。

 

WTO対象工事の基準額は2年ごとに見直され、2020年4月からは、国発注分の建設工事の基準額は6億9000万円となりました。

 

発注予定を踏まえ、各地方整備局等で1件程度ずつ実施されている...はずです。

 

加点の条件

@ CCUSの現場登録を行う事、カードリーダーを設置すること

 

A 工事期間中の平均登録事業者率90%、平均登録技能者率80%を達成するように努める

 

B 工事期間中の平均就業履歴蓄積率50%を達成するように努めること

 

以上の「目標基準」を全てクリアした場合、工事成績が1点加点されます。

 

1点?

 

平均技能者登録率が目標基準を上回る90%以上になると、さらに1点が加点されます。

 

しかし、3つの項目のいずれかが目標基準を20ポイント下回った場合は1点の減点になり、未達成項目が公表されます。

 

各項目のチェックは、初回は工事開始後6ヶ月後、以後3ヶ月に1度行われます。

 

Aの対象工事

WTO対象とならない一般土木工事を対象に、各地方整備局で3〜4件が試行されます。

 

目標基準を上回った受注者に対する加点措置は義務化モデル工事と同じですが、義務化モデル工事のような減点措置はありません。

 

ということで、CCUS完全実施のための試行が既に始まっております。

建設技能者のレベルに応じた賃金支払いの実現

ん〜。これと似たような記事を、補助者時代に先代のホームページにupした記憶があります。

 

当時は、下請業者様への支払いの方法を軸に、色々と改善の方針を掲げた内容だったような気がします。

 

平成19年6月に改正されておりますね。

 

あれから随分時間が経過致しましたが、ここで再びピックアップされているということは、あまり改善されていないんですかね...。

能力評価基準

令和元年度中に、建設技能者の能力評価基準が整備されました。

 

これは、建設業の許可における29業種という括りではなく、能力レベル判定のための35職種という形で設定されております。

 

レベル判定

 

この能力レベルと建設業界による処遇目標に結びつけ、適正な請負代金として反映、結果として技能者の賃金上昇に繋がるよう国と建設業界が一体となって取組を推進することとなりました。

 

例えば最低設定額は、レベル2では年収で300万円、レベル3では576万円、レベル4では620万円等として検討が進んでいるようです。

 

更に、専門工事の施工能力等の『見える化』を実施。

 

『見える化』では次のようなことを目的としております。

 

*技能者を大切する
*専門工事企業に対する適正な評価
*選ばれる環境が整備されることにより処遇改善や人材への投資を促進
*結果として、業界に対する安心感を構築することができる

 

評価に関しては、建設キャリアアップシステムと技能者の能力評価のレベル判定システム等と連携して行います。

これからの取り組み

@専門工事業の団体等においては、職種に応じて職長(レベル判定においての4・3)と若年技能者(レベル2)の賃金目安をそれぞれ設定。

 

A下請業者が技能者に対して賃金目安に応じた適正な賃金が支払われるよう、標準見積書において職長手当などのマネジメントフィーを含め、適正な労務費を計上することができるように措置。

 

Bまた、元請業者においても下請業者の適正な見積もりを尊重し、これを徹底させる。

 

以上の取り組みを実施することにより、賃金上昇の好循環に繋げたい、ということのようです。

 

更に、令和3年度からは、レベル4・3の技能者が経審において加点対象となりました。

 

独立を視野に入れるとしたら、レベルによる技術者としての認定が欲しいところですが、組織に所属していることを前提に待遇UPの視点から考えた場合は、このような方向になるのでしょうね。

 

こちらもどうぞ。

その他の取り組み

CCUSの情報セキュリティ強化と人材引き抜き防止策

CCUSのシステム内は、沢山の個人情報が詰まっております。

 

これを誰でも自由に閲覧できるという状態は、個人情報保護の観点からあまり芳しいとは言えません。

 

しかし、システム的にはまだ始まったばかりであり、今後どのような事情で情報漏洩や不正アクセスが起こるかはまだまだ未知数であります。

 

そこで、情報閲覧に関しては条件付きとなります。

 

技能者情報の閲覧について

技能者が所属する事業者

技能者が携わる現場の元請・上位下請業者

その他の建設業者

閲覧条件なし 閲覧条件一部あり 閲覧条件あり
システムに登録されている所属技能者の閲覧は全て可能

*元請業者は、自社の現場に入場している技能者に情報のみ閲覧可能
*上位下請業者は下位下請業者の技能者情報のみ閲覧可能

技能者と所属事業者のの双方が同意した範囲のみ、他社の技能者の情報が閲覧可能となる。
人材引き抜き防止策

CCUSでは『人材の引き抜き』を防止するための施策を謳ってあります。

 

技能者の電話番号やメールアドレスを本人のものではなく、事業所のものでも『可』とするよう変更が加えられました。

 

まだまだ途上のため、今後は懸念のある情報閲覧については、逐次、適用の改善やシステムの改修を行っていくことになっております。

建設キャリアアップシステム(CCUS)モデル工事

ちなみに、ですが、国交省は2020年度、直轄の一般土木工事(WTO対象)約80件を対象として、発注者を指定した「CCUS義務化モデル工事」を26件、受注者が希望する「CCUS活用推奨モデル工事」を25件試行したそうです。

 

他、営繕工事を対象とした「CCUS活用推奨モデル営繕工事」を9件、港湾・海岸・空港工事を対象とした「CCUS活用モデル工事」を13件実施したそうです。

 

そして2021年度、国土交通省直轄のすべての一般土木工事(WTO政府調達協定対象)を対象として、建設キャリアアップシステム(CCUS)モデル工事を原則化するとのことです。

 

国土交通省直轄のCランク工事が対象のモデル工事も、既に20の都府県建設業協会が賛同し、それに加えて4県の協会が検討しているとの事です。

 

直轄工事以外に、都道府県や独立行政法人でもCCUSモデル工事の導入が徐々に浸透してきており、今後はさらに地方自治体等でもCCUS活用の取り組みを広げていく計画です。

CCUSの今後の見通し

現在、建設キャリアアップシステムの運用は非常に厳しいものになっているようです。

 

令和2年10月から、登録料がそれまでの2倍に値上がりし、現場利用料も3円から10円に値上げされました。

 

管理者ID利用料も月額200円から950円に値上げ。

 

技能者登録料は令和3年4月1日から『簡易型登録』と『詳細型登録』に分かれ、簡易型についてはこれまで通りの2,500円ですが、詳細型は4,900円となります。

 

しかし、実績を積み上げていくためには詳細型でないと意味がないため、実質値上げとなります。

 

今後、運用赤字が増えていくようなことになれば、更なる値上げが予想されます。

 

また、今後は運用を振興基金から別の機関に移行するという話も、噂レベルではありますが聞こえてきております。

 

そのような不安定な状況ではありますが、ゼネコンの下請業者については、建設キャリアアップシステムの技能者カードを保持していないと現場に入れないこともあるようです。

 

浸透率が低いことは否めませんが、一部の業者間では活用されている事実もあるため、建設キャリアアップシステムを立ち消えにさせないため、このまま値上げをしながら存続していく可能性が高いのではないかと考えております。

 

従って、登録が後になればなるほど初回の登録料が高額になることが予想されますので、登録をお考えであれば早めに登録された方が良いかもしれません。

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